SCOPES

今、その人に、3つの視座を 尋ねる連載

vol.3-0 イダルゴ

今、その人に、3つの視座を尋ねる連載「SCOPES」
今回お話を伺うのはイダルゴさんです。

www.nicovideo.jp

多方面にわたり、見た人の記憶に残る動画を制作する投稿者。

キャッチーなコンテンツから謎めいたものまで、素材とする範囲は幅広い。
幾重にも織り込んだ内容の音声に対し、キレのあるグラフィックで描出する。

幽霊東京でアホなことしてみた
ボッチノ

「音MAD DREAM MATCH -天-」以降はサブアカウントも公開。
それぞれコンセプトに即した運用を発展させながら、鋭い魅力を放ち続けている。

貨幣_虎_革命
【Arknights】ナットウ宣言【音MAD】

まずは、今回お送りした質問に対して、イダルゴさんがそれぞれどのような回答をいただいたか見てみましょう。

・音MADの投稿/活動を始めたきっかけを教えてください
2018年初旬、VTuberをよく見ていました。当時はVTuberのダンスロボットダンスMADが流行っていて、そこで音MADというものを知りました。それまでYouTubeボーカロイド楽曲を聴くことはありましたが、音MAD及びニコニコ動画は見ていませんでした。Twitterもしていなかったのでインターネット上に何かを残すことはしていなかったと思います。それまでは学業/部活動で生活時間は満たされていて、あとはゲームをしたり、漫画を読んだりしていました。創作に近しいことと言えば、絵の模写などをしていましたが、ただ楽しいからやっていただけで、人には見せていませんでした。

VTuberから音MADを知った後、その投稿者の他の動画を見ることを通じて、色々な音MADがあることを知り、マイリストなどから漁っていくようになりました。
音MADを知ったのが遅めだったこともあり、再生数順などでそれ以前の動画についても見ました。新着順で見るようになるのはもう少し後で、2019年ごろからだと思います。その中でじょしらくマイムマイムが音MADの視聴を加速させました。一度見た後、ふとした時に思い出して、また聴きたくなって、動画を開く。それが何回もある。いわゆる音MADの中毒性を実感して、好きな音MADを見つければまたそれが体感できることに気付きました。そしてそれを追い求めるようにたくさん動画を漁りました。

たくさん見ていたら自分も作りたくなったので作りました。特に明確なきっかけがあったわけではなかったと思います。当時は音MDMが開催されていたようでしたが、その存在を知ったのはすっかり終わった後でした。2018年の中頃、試しに作り方が解説されているブロマガなどを読んで初めての音MADを完成させました。(https://x.com/hidalgogo852/status/1471367487111319554
ホドモエシティトリトドンの音MADです。試作なのでニコニコには投稿せず、仲間内で少し見せたくらいでした。その後、2018年の後半になり、当時よく見ていたVTuberでマイムマイムの動画を作って、これが音MADの初投稿となりました。それからしばらくはVTuberの音MADを投稿することになります。

初期にVTuberの動画をメインで作りつつも、初投稿時点である程度いろいろ音MADは見ており、その後もどんどん見るようになっていたので、他の動画を作りたいとは思っていました。そして2019年からはだんだんと色々な動画を作るようになっていきました。初期は肌男など味噌煮さんの影響が強く出ているように思えます。

・直近の音MADにおける動向で印象深い出来事は何ですか
直近で言えば自分も関わったということもあり、ホロライブ音乃瀬奏さんの公式音MADが印象深い出来事でしょうか。(https://youtu.be/u7XGHjuUBiA
これに関する自分の記録として、公に見せてはいませんでしたが別で書いていたものがあり、繰り返し書くことになってしまうのも億劫なので以下で抜粋します。

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参加。~00:32の音声と00:13~00:32の映像を担当。
不思議な縁もあるんだなと思う。どうなるかと思ったけど完成してよかった。

最近のVTuberについては寡聞でこのライバーの方も初見だった。
今回いろいろ見てみてホロライブについて知った。なんとなく見たことあるなあ、くらいな人の輪郭がはっきりとした。グループとかもあるんだ。

1から知っていくことも含めてVTuberの音MADを作るのはいろいろと難しい部分が多い。
動きのある映像を作りづらいし、使える候補が膨大で把握が大変、そこから選び取る指針をどうすればいいか悩む。
定番のネタを使うのはアリだけど音MADの浸透力でネタの固定化に加担してしまうんじゃないかという不安が昔から少しある。
ただそれは本人の立ち回り次第なので活動者に失礼かもしれない。
そもそも長い動画ファイルを扱いたくない。結局、自分が一視聴者のファンの立場だったとして、これを作る人が仕事として作っていたらちょっと嫌なので、自分が純粋に面白いなと思ったところを使うことにした。

全体を通してファンの人に喜んでもらえたらいいなあと思いながら作った。結果とりあえず喜んでもらえてるようで良かった。
あとは音MAD性とか”らしさ”と、公式・商業とのバランス。涙でパーティクル使うけど、図形は正円じゃなくて水滴にしているところなどに葛藤が表れている。
好きに作りつつも「誰かに頼らないと生きていけないって無様なことですね」とかが変に受け取られていちゃもんつけられたらどうしよう、
とか半分くらい本気で心配していた。わざわざ「ティックトック」ではなく「チックトック」にするなど必要かも分からない配慮もしている。
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最近では音MADが公式と関わりを持つことが多く見られるようになりました。
自分の場合、以前中国のアークナイツ音MAD合作 https://www.nicovideo.jp/watch/sm41656609に参加しており、
詳しくは知らないのですがこちらも公式が協賛している二次創作イベントの一環のようです。(https://www.bilibili.com/festival/MRFZ2024BIRTHDAY

こう振り返ると、意外にも自分もこの流れに乗っていることが多いと感じます。
ですが、個人的にはこの動きに対して肯定的でも否定的でもない立場です。たまたま縁あってこのような案件に参加し、面白い経験になったと思います。

一方、今の音MADを見渡すともっとうまく作れる人や意欲のある人はいると感じています。なので私としては個人作を作っていきたいと思っています。

・音MADの領域において今後見てみたいものはありますか

考えてみましたがなかなか思い浮かびませんでした。あまり音MADに関することで自分が期待していることはないようです。何かこうなってほしいということはなく、なるようになればよいと考えています。しかし、何もないというのも寂寥すぎるので少し強引に思いつくことにしました。

音MADにおける結びつきの意味と有効性について新しい気づきを与えてくれるものを見てみたいです。それは自分にとって大きなヒントになると感じています。

日常的に、会話や推論や比喩などについてその結びつきと有効性に疑念を持つことがあります。私たちが何かを言うとき、あるものとあるものの要素をつなげてその結果を述べることがあります。その思い付きは何らかの点と点を結びつけることで言葉にできて、それができたときは整理できてすっきりした心持ちになります。いろいろ考えた結果、うまく辻褄が合って言語化できたな、という心持ちです。

ですが、その結びつきにどれほどの有効性があるのかは分からないと思いました。一つ少し極端な例を言ってしまえば、なぜ陰謀論がダメとされて、科学的な話が正しいとされているか、ということです。

翻って、音MADは何かと何かを結びつけることが基礎的な行いです。そして結びつける理由はいろいろあります。あのフレーズがあの曲と似ていたから、歌詞がイメージに合っているから、雰囲気が合っているから、好きだから、など。逆に合わないからこそ結びつけることもあります。そうした組み合わせる理由は理解できるものですし、それらがある程度有効性を持たせているのでしょうが、自分にとってより重要なのはそれをどのように作るか、ということでした。どのような構成/内容/画面/雰囲気/音/セリフ...にするのか、大きなことも細かいことも全てが作業されて結びつけられます。

それらは、組み合わせるものさえすべて重要な並列する一要素として組みあがっていくように思えます。どのように作るかが、結びつきの強度や質を変えているような気がしていますが、どうすればよいかというのは常々悩んでいます。また、結びつけるものは2つに限りません。色々なところから手を伸ばしたくさんの異種を一つにすることができます。自分の場合、そうした企みが点と点を結んでいって個人的にうまく一つの線を成せたと思うとき、とても喜ばしく思います。

確か、よりちゃんがいなくなった回についての話で、それがもともと宇宙の初めから完成するのが決まっていたかのよう、と表現した覚えがあります。冷ややかに見れば蛇足の加筆作業が、世界に欠けた部分を埋めるピースのように思えてしまうのは、矛盾しており、これは上に書いた日常で感じる陰謀論的な有効性のない思い付きと同質のものです。音MADに関して、この結びつきが必然的に思えてしまうのは不思議に思いました。

他の人の音MADについても、関係のないものを組み合わせているにも関わらず、なんだかひとつになっていると感じることは少なくありません。今のところはっきりと考えを捉えられてはいませんが、このあたりのことに関して、何か気づきを与えてくれるような動画が見られたら良いなと思いました。そしてそれは、回答を企図していない動画であるような気がしています。

(フォーム回答:2025/05/11 インタビュー期間:2025/05/12~2025/06/@@)

以上が頂いた回答となります。
次回の更新以降、順次それぞれの回答を掘り下げた記事を公開していく予定です!
第一回の更新は6/12(木)22:00を予定しています。よろしくお願いいたします。